
今回は、「まれもの」の作家・ののむら みなみさんに、お話を聞きました。七窯社のデザイナーとして6年目になる、みなみさん。どのような思いで創作をしているのでしょうか?
まずはじめに、陶芸を始めたきっかけを教えてください。
陶芸を始めたのは大学生の時です。私は美大の工芸科に進学しましたが、その中には染織・漆・彫金鍛金・鋳金・陶芸 の4コースがありました。コースに分かれるのは2年生からで、1年生の時に、すべてを体験します。その1年で、あらゆる素材に触れる経験をしました。その中で、すべてをきっちりと決めて制作するのではない、作意だけではまとまらない、土ならではのゆったりとしたところに魅力を感じ、私の性格とあっているのではないかと思いました。また、色彩豊かなところにも惹かれました。
2017年のインタビューでも、土との相性がいいと話していましたね。
作品を作りたいと思うのは、どんな時ですか?
まず一番ワクワクするのは、釉薬のテストをしていて素敵な色が出たときです。それで、次の作品に使いたいなって考えたりします。他には、落書きしていて「これブローチにしたら可愛いんじゃないかなぁ」とか、服を見ていて「この服にはこんなアクセサリーが合うんじゃないかなぁ」とか考えます。そうした日常の中で、かわいい!とか素敵だなって心が動いた時に作りたくなるかもしれません。
制作過程では、どんなことにこだわっていますか?
窯の中でできる偶然性や土ならではの柔軟性を生かしたものづくりがしたいです。あと、釉薬の色や質感にはこだわりたいです。やきものは最後に窯の中で完成するという特異な素材なので、同じように作っても全く同じ出来上がりにはなりません。一方で商品として量産しなければいけないので、ある程度の均一性も求められます。そのバランスをとるのが難しいです。でも、均一ではない曖昧な美しさは、現代には珍しいと思いますし、魅力的だと思うので、伝えていければいいなと思っています。
確かに、想定とは違うものが出来た時の感動も、魅力として伝わるといいですよね。
そのような考え方に影響を与えた人物はいますか?
小川待子さんや、ルーシー・リーが好きです。小川さんは素材を最大限に生かしてダイナミックに表現しているところが好きです。ルーシー・リーの作る釉薬の色はもちろん、やきものとの向き合い方にも憧れます。彼女は何十年もやきものを続けているのに「窯のふたを開けるときにワクワクする」と話していました。こんな風にいつまでもときめきを忘れずに作品を作れるって素敵だと思います。
では最後に、みなみさんが作品を通じて伝えたいことは何ですか?
色や質感といった、やきものの素材ならではの魅力的な部分を伝えたいです。酸化金属が生み出す色は独特ですし*、同じ釉薬でも、分厚くかけると奥深さを増して、全然違う色になったりします。質感は、ツヤや透明感もあれば、土っぽいザラザラした面もあります。すごくバリエーションがあって、私もまだまだ新たな魅力を発見することが多いです。

取材・文:森 日香留